「……『なんだこいつ、また来たのか』」
幼なじみのそんな言葉に、俺はギクリとして読んでいた雑誌から顔を上げた。彼女は悪びれもせず、冷ややかな目で俺を睨んでいた。
「なんだよそれ」
「あんたの心の中よ」
モモは「お見通しなんだから」と不敵な笑みを浮かべた。
確かに、まるで俺の気持ちをトレースしたかのような台詞ではある。俺の思考など所詮はモモに読まれる程度の単純なものには違いないが、それでもずばりと言い当てられるのは悔しい。
なんで分かるんだよ、と言い返そうとした俺に、モモはさらにたたみかける。
「『なんで分かるんだよ』って思ったでしょ」
「……おお、思ったさ」
「何でか分からないの。でも何となく分かるの。当たってるんだよね?」
モモはにやにやしながら俺の顔を覗き込んだ。
どういう仕組みか知らないが、心が読まれている。彼女の天性の勘なのか、それとも実は超能力者だったのか。いずれにせよ、今日のモモは鋭い。鋭すぎて、俺も迂闊なことは考えられない。
「悔しいって思った?」
にやりと笑うモモ。その顔を見ていたら、ちょっとした悪戯心が湧いてきた。心を読まれるのならば、それを逆手に取ってやればいいのだ。
「じゃあ、俺が今何を考えてるか当ててみろ」
「そんなの簡単」
胸を張って俺を見つめるモモ。やがて、ぱっと目を見開いて、口を開いた。
「『俺、モモのこと好きかも』って――」
「思った思った」
「え? ……え、だって――そんな――」
口ごもるモモを見て、俺は参ったか、と言ってやるつもりだった。しかし、彼女は顔を真っ赤にして俯く。
「……あたしも、実はあんたのこと――」
「え?」
どうも、勝負は俺の完敗に終わるようだった。
[0回]
PR