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#twnovel@SIREN

良崎(@kanfrog)のツイッター小説などまとめブログです。

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No.96

ご主人が蜜柑を剥いていたのでねだってみたが、予想外の酸っぱさ。「大丈夫か」『お気遣い感謝です』「涙目だぞ」『人間ににゃるための修行なんです』「にゃあにゃあ泣いちゃって」『にゃいてにゃい』「猫又も蜜柑はダメなのかあ」撫でられているうちに酸っぱさなど忘れてしまった。

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No.95

冬の欅の天辺に、鴉の空の巣。何故だか気配を感じ、私は呼び掛ける。「誰かいるの?」『お帰り!』彼はもう何年も、連れ合いを待ち続けているという。「言いにくいんだけど」『知ってるさ。薄々気づいてた』「寂しかったら一緒においで」『寂しくねえよ』言いながらついてくる冬鴉。

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No.94

満月を見上げ、彼女は泣いていた。「どうした?」「月の光が辛いの」真顔で言われ、僕は首を傾げた。今日の彼女はどこかおかしい。「調子狂うなあ。何言ってんだよ」「見た目が変わっても――私はこの手も好きだから」いつの間にか毛皮に覆われていた手を、彼女は優しく撫でた。

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No.93

「タマ、人前ではやるなよ」二足歩行の猫又をたしなめた。彼女は炬燵に潜り込み、にゃあと惚けた返事。「何だか人間臭くなってきたな」『だって人間ににゃりたいんだもの』どきりとしてタマを見たけれど、ただ眠たげにうずくまるだけ。考えすぎだと言い聞かせ、俺も炬燵で丸くなる。

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No.92

「僕、雪も雪女も大好き」「ありがと」「大人になったら結婚してあげる」「待ってるわ」無垢な瞳に雪女は綻んだ。その15年後、彼は言う。「約束、果たしに来たぞ」「でも私、化け物なのに」「雪女だから好きなんだって、言ったろ」雪女は声を上げて泣いた。街は猛吹雪になった。

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No.91

「地上もおめぇもいい眺めだ」腕の中の私に、彼は笑いかけた。得意げな様子に、つい軽口。「鼻高くしちゃって」「生まれつきだ。……空の散歩は不満かい。俺みてぇな化け物が嫌なのかい」哀しみが滲む言葉にはっとした。羽ばたきにかき消されないよう、叫ぶ。「好きだよ、天狗様!」

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No.90

土産の携帯ゲーム機に幼女は目を輝かせた。「ソフトちょうだい」「ダウンロード版にしろ」「通信途切れるから嫌」「田舎だからな」「すれ違い通信したいし出てっちゃおうかな」それだけはやめてくれと言うと、「じゃあ新作ソフト買ってきてね」と宣う。今どきの座敷童は厄介だ。

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No.89 ツイノベの日「鏡」その2

姿見の前で彼は私に訊ねる。「元には戻れなくなるよ。いいの?」「本望よ」彼が微笑み、頷く。「痛くないようにするよ」私は静かに目を閉じた。喉元に温い感触とぷつりという音。次に目を開けたとき、私はもう人ではない。鏡にも映らない。薔薇色の闇の中、二人で生きていくのだ。

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No.88 ツイノベの日「鏡」その1

現実に疲れて逃げ込んだ世界は総てがさかさま。優しい友達に温かい家族、そしてもう一人の自分。彼は言う。「ここが気に入ったならずっといたらいい」「ああ、そのつもりさ」「どうせ元の世界じゃ誰もお前を待ってやしない」僕ははっとして踵を返す。僕を待つ人達の元へ帰るために。

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No.87 冬の雀

「冬の雀って可愛い」彼女が顔を綻ばせた。確かに、丸いフォルムは愛らしい。「夏より一回り大きいよな」「もこもこだね」もこもこ。「今、膨らまなかったか」「そんなはずないでしょ」もこもこ。「いや確実にでかくなってるぞ」「まさか」やがて地上は巨大雀に覆われた。もこもこ。

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